【感想】甘くない砂糖の話【アマゾンプライム】

体験記
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最近アマゾンプライムビデオで配信が開始された『甘くない砂糖の話』という映画を観たので、感想を以下に。アマゾンプライム会員なら無料で観れます。

 

 

どういう作品かというと、砂糖がどれほど危険なものかを身をもって示すために、ある男が2か月の間、毎日スプーン40杯分の砂糖を摂取しながら生活した、その様子をドキュメンタリーとしておさめたものである。

 

とにかく作品全体を通して、「砂糖は悪」という制作陣の強い感情がにじみ出てきていて、アクの強い作品だ。甘いもの好きの人が見ると、怒りで体が震えてくるかもしれないが、その震えすらも砂糖のせいにされる可能性があるのでご用心。

 

砂糖による被害がこれでもかというくらい強烈に描かれる作品だが、特に印象的だったエピソードが二つ。アボリジニのエピソード、そしてマウンテンデューで歯がボロボロになってしまった少年のエピソード。

 

まずアボリジニのエピソードについて。オーストラリアの原住民であるアボリジニたちが、従来の生活様式が、西洋式の生活様式の導入とともに入ってきた砂糖まみれの飲料によって破壊され、死者が大量に出たというエピソード。

 

アボリジニたちの墓が映し出され、さも砂糖によって殺されたかのように、センセーショナルに描かれる。だが、本当にその表現は適切だろうか?確かに砂糖によって彼らのライフスタイルは変わったが、問題となるのは教育の普及によって一度は村のショッピングセンターから砂糖水の類が締め出されている点だ。

 

完全な無知ならまだしも、一度は砂糖水によって健康が害されるという実体験を経ているし、そのことを危惧して村から砂糖水は締め出されている。ということは、彼らは身体でも、また知識としてもその危険性を理解しているはずだ。

 

そのうえで、砂糖水が村に戻ってきたときに再び大量に摂取して健康被害が出ようが、それは個人の価値観やリテラシーの問題だ。砂糖水は、ずっと長いこと「売れ筋商品」なのだから企業はそれを売る。まったくの無知の人間を騙しているのならまだしも、一度は身をもってデメリットを体験したのであれば、それを買うかどうかの判断は個人がなすことであって、その責任を負うべきも個人だ。

 

同じような話でもう一つ。マウンテンデューのエピソード。

 

マウンテンデューのエピソードは、アメリカのとある町では異常なほどにマウンテンデュー(カフェインと砂糖が大量に入っている炭酸飲料)が摂取されている、という話。10代にも関わらず、ほぼすべての歯が虫歯で溶けてしまっている人もおり、歯科医が教育と治療に奮闘している。

 

このエピソードについても、街の人間たちは歯科医から砂糖水の危険性について教育を受ける。自分の歯がボロボロになっているのだからそのリスクについても熟知しているはず。それでも、ある少年が治療で歯をすべて抜いた後に「それでも僕はマウンテンデューを飲み続けるよ」と言い放つ。

 

上記2つのエピソードに共通しているのは、砂糖水のユーザーのリテラシーは考慮されず、一方的に被害者として描かれている点だ。どうもこのあたりの恣意性というか、切り取り方に悪意があるように感じて素直に見られなかった。

 

砂糖を大量摂取することのデメリットを知っているにも関わらず摂取し続ける人間の側にも問題があると思うし、この映画ではそれが描かれていなかった。たとえ砂糖に中毒性があるのだとしても、歯が全部虫歯になるとか、若くして病気になって死ぬとか、その問題をすべて砂糖に押し付けるのはどう考えても無理がある。

 

教訓のようになってしまうけど、どんな行動においてもメリットデメリットがあるし、どんなに健康的な飲食物でも同じものばっかり摂り続けたら体に良くないわけで、そこらへんを総合的に判断して行動する必要があるわな、と。

 

そういった個人のリテラシーの問題を一切排除してしまっているがゆえに、この映画の感想はあくまでも「砂糖って危ないんだなぁ。気ぃ付けよ。」くらいの認識でとどめておく必要がある。「コカ・コーラ社は滅すべし!」みたいに影響されちゃうと、物事を一義的に捉えることになるから危険だよね。

 

とにかく、派手な演出や過激な物言いをしている作品からは「本当にそうかな?」と一歩距離を置いて眺める必要がある。これって人間でも同じかもしれないけれど。

 

 

最後に、砂糖水を売っている企業から資金援助を受けて「砂糖水は健康を害さない」というデータを出した研究者が描かれていたシーンがあったんですが、まるでその人が悪の親玉みたいな切り取り方なわけですよ。

 

あらゆる事象(論理的で公正なものとして信じられている科学までも)は権力やお金によって、誰かの都合の良いように歪められるわけですね。権力はいつも真実を隠すわけです。いろんな政治家の顔が浮かぶ浮かぶ…

 

ここで考えてみましょう。

 

研究データは、砂糖水の会社の力によって「砂糖水は健康を害さない」ことを喧伝している。

 

じゃあ、「砂糖が諸悪の根源だ」と強く主張するこの映画は、どんな人によってコントロールされているんでしょうね?

 

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